―― 収録各曲の解説に移りたいと思いますが、その前に3タイプの収録構成についてお伺いします。
清水:3タイプとも1曲目はリード曲の「モノクロームデイズ」になります。これは同じもので、ヴァージョン違い、ボーカル違いなどはありません。2曲目以降は3タイプごとに収録曲が違って、2曲目がチーム曲、3曲目がバラード曲、4曲目が特に決めのないフリーな曲という構成です。チーム曲はチーム色を感じさせる楽曲になっていると思います。もちろんボーカルは各チームメンバーが歌ってます。3、4曲目は、直接チームとのリンクはなく、ボーカルもチームに関係なく曲にあったメンバーが歌ってますので、どの盤に収録してもいいんですが、盤ごとのバランスを見て配分しました。ただ、メインボーカルがある曲は、歌っているメンバーの所属チーム盤に入れるようにはしてあります。
―― それでは、やはりまずはリード曲「モノクロームデイズ」から解説をお願いします。ここでは、作詞と、作曲も正木さんと共作された和香さんにも入ってもらいます。
和香:よろしくお願いします。
―― まずは、リード曲選定の経緯から。
清水:実は、この曲が10曲の中で一番難産だったんですよね〜。
和香:はい、難産でしたね・・・。
清水:前作までは、リード曲はすべて最初から曲が決まっているか、作る人を決めてから制作に入る形だったんですが、今回初めて誰が作るのか決めずに白紙で始めたんです。それで、デモを持って3組が集まった時に「ちょっとリード曲になりそうな曲がないですね〜」となって、「それじゃあ宿題にしますか」と。それも、ライブで盛り上がるロック、テンポはbpm160以上の速いテンポでと指定もしました。本当はこういう指定をすると、せっかく作ってもらっても曲調がかぶって、(リード曲でなくても)収録曲としても入れられなくなる懸念もあったんですが。ただ、それは全くの杞憂で、3曲とも曲調が全然違ったので、リード曲にならなかった2曲も収録しました。どの曲かバラしますと「ハイブリッドガールU」と「叫べっ!」です。
―― じゃあ、その3曲の中からリード曲は「モノクロームデイズ」に決まったと。
清水:はい、ポップで耳に残るメロディでアイドル歌謡感がありましたし、それに正木さん和香さん組はこれまでリード曲をやってもらってないので、バリエーションの観点からもそろそろリード曲をやってもらいたいなという思いもありましたし。
和香:正木さんによるBメロCメロと簡単なアレンジがまず先に完成し、清水Pに雰囲気を気に入っていただけたので、念願のリード曲になったんですが、そこから紆余曲折があって・・・。
清水:かなり何回もやりとりをしながら、色々と要望を言わせてもらいながら、作っていってもらった感じですね。
和香:Aメロとサビは私が付けたんですが、メロディに関しては、この曲は私的にはBメロがキモ。あの悲痛な叫びありきで、後は足りないものが呼ばれて集まった感じです。歌詞のコンセプトはデモ提出の時点ではまったく決まっていなかったので、出てきたメロディから決まったのでしょうか?清水Pにお聞きしたいです。(笑)
清水:とっても正木さん和香さんコンビらしい曲で、メランコリックだな〜と。ちょっとユーミンの初期の頃、荒井由実時代の匂いを感じたんです、「ひこうき雲」とか。それで、シリアスな世界観のある詞の方が合うかなと。
和香:歌詞づくりは、清水Pのオーダーに答えるので精一杯でした。シリアス感、メランコリックな学園もの、いじめがテーマ。とても過酷な感じ、でも応援歌。1番学校、2番家、とストーリー性があるように。など細かく決められていて、なかなかOKが出ませんでしたね。
清水:そんな、細かくなんて決めてないですよ、人をいじわるプロデューサーみたいに言って〜(笑)。和香さんがどんどん書いては送ってくるので、「このフレーズいいですね」「ここはよくわからないかな」と返事を打ち返すので精一杯でしたよ。
和香:そんな風に歌詞はコンセプト等まわりから固まっていったので、言葉のパズルみたいなところがあり、語彙の無さを思い知るわけですが・・・、なんとか限られた文字数とメロディの中に想いをこめ、完成させる事ができたかと思います。消極的、否定的な毎日にうずもれる苦しい時期を越え、鮮やかな沢山の素敵な色が溢れている世界で、人の素晴らしさを感じながら自分の色を作っていきたい、という希望で歌詞の最後をまとめました。
―― レコーディングはいかがだったでしょうか。
和香:ボーカル録りについては、リード曲なので、サビは全員でというのは最初から決まっていました。サビ以外の1人で歌ってる部分は、今回は主に、なぁちゃん、笑ちゃん、かなちゃん、れおなちゃん、なぎちゃんですね。大サビ(間奏あけの部分)の中に1人だけ、ちょこっと4期生メンバーが歌っている部分があります。これをあてるのはかなり難しいと思いますよ。今までのメンバーの声を知ってる方が、消去法で考えないと無理じゃないかな。ぜひ、誰がどの部分を歌っているか当ててみてくださいね(笑)。
―― とても想いの伝わる曲、歌ですよね。
和香:Star☆Tのみんながこの曲を歌ってくれて、イメージどおり希望がある力強いメッセージを持ち、素敵な振りもつきました。豊田から全国の皆さんのもとにこの曲が届いて、色んな事を感じていただけると嬉しいです。もちろん私も、頑張っている彼女達にたくさんの元気や勇気を貰っています。
―― 続いてヴィーナス盤収録曲に移ります。まずは、ヴィーナス盤2曲目の「ハイブリッドガールU」について。こちらは作曲・アレンジの菊池卓也さんに入ってもらいます。
菊池:よろしくお願いします。
―― 菊池さんは、この楽曲解説には初登場ですね。
菊池:はい、菊池・松中組として、Star☆Tのアイドルデビュー時の「ひまわり」からお世話になってました。到来よりシンガーソングライター松中啓憲のCDなどをディレクションしておりましたが、僕が本来豊田出身ということもあり、ふとした経緯でStar☆Tと巡り会い、それからは松中の曲のカバーという形で、楽曲を提供させていただきました。というか、「ひまわり」以外は松中がStar☆Tのために提供する形で、松中自身がセルフカバーをさせていただいている、という感じです。「My mother,My father」「明日晴れる」などがそれに当たります。サードの「変わるもの、変わらないもの」は、清水Pに明確なオーダーをいただいたこともあり、ピアノ演奏以外はほぼ1人で作りました。
清水:もう、デビューからずっとお願いしてきてるんですよね、えーと4枚目以外は(Star☆T4thシングル「Swinging Star Forever」のみ菊池松中コンビ曲がない)。
菊池:1回お休みを頂いた時は、ちょうど松中と二人で精力的に全国各地をツアーしていて、各地で曲提供について言いふらしていました(笑)。そして、全国発売となる「ハイブリッドガール」のアレンジで再びお話をいただきましたので、これは気合を入れないと!と思い、思い切って原曲を裏切る形で(笑)、当時流行りのEDMっぽいアレンジでやってみましたら、清水Pより「この方向で」との許可が出ましたので、やりたいようにやってみました。それまでは松中菊池の曲はバラード、という認識があったと思われますが、ここで大きく殻を破ってハイテンションな曲をやってみよう!という気持ちが強くありました。samanoさんの元々の曲が良い曲でしたので、沢山の方に受け入れていただけたと思います。
清水:いや〜「ハイブリッドガール」はいまやStar☆Tの代表作、出世作ですからね。ライブで必ず盛り上がりますから。あの疾走感のあるアレンジあってだと思います。
菊池:前置きが長くなりましたが、今回のCDはガチで選曲オーディションが行われました。清水Pのお話の通り、去年の夏頃作曲陣が集まりまして、どんな曲をリードにするかなどが打ち合われました。当初はクリスマスの時期に発売という話もあり、クリスマス曲なども候補に入っていましたが、発売が年明けということになり、それぞれのイメージがガラッと変わったように思います。清水Pは「好きなように」というオーダーでしたが、実は条件が有り「テンポの速いロック曲」という今までにない方向で考えられているようでした。
清水:ライブを想定してだったんだと思いますね。そこで作って来られたのが、
菊池:僕がこの曲、清水Pは「叫べっ!」、正木さん和香さん組は「モノクロームデイズ」の原案を持って来られて。それぞれの「ロック」のイメージがバラバラだったのが印象深かったですね。
清水:3曲並べると「本当に同じ宿題で作ったのか?」と思うくらいまあ違う曲だった。唯一共通するのはテンポが速いってことくらいですよね(笑)。3組の音楽志向が全然違うといういい例だと思います。
菊池:この曲については「X JAPAN」みたい、とか言われました(恐れ多い話ですが 笑)。さて、この「ハイブリッドガールU」ですが、前作のイメージとは全く違います。もともと清水Pは、前作の時もSF的な世界観のストーリーを考えられていたようで、今回の曲ではそれがしっくりときたのかと思われます。リード曲にするため、サビをアイドル感のあるメジャーな感じにしたバージョンも作製してみましたが、恐らくお互いしっくり来なかったんですよね、多分(笑)、それで元に戻しました。
清水:そうですね、リード曲ではなくなったので、ここはとことん好きに作ってもらおうと思いまして。
菊池:チーム曲になったことで、コンセプトがハッキリと固まり、録音の際にはオープニングナレーションが入るなど、かなり好き放題やらせていただけたと思います。サイバーで終末的な世界観。そして、切なくも力強いメッセージを込めた歌詞など、見所が多い曲になったと個人的に満足しております。
清水:まず菊池さんの曲があって、“ハイブリッドガールU”というコンセプトはあとづけです。前作「ハイブリッドガール」の時に、作詞のどうまえさんとの打ち合わせで「ハイブリッドガール=人造人間少女的な世界観でも面白いよね」と話してたんですが、曲的に合わないということで、発表した感じに落ち着いた経緯があって、今回この曲を聴いた時に、“ハイブリッドガールU”にしたら面白いんじゃないかと。前作に続いてどうまえさんに作詞をお願いして、“エヴァ”とか“最終兵器彼女”とかセカイ系ですね、そういう感じで遊んじゃいましょうと。“続編”というコンセプトを意識したのもこの曲からですね。曲自体がこれまでのStar☆Tにはないジャンルなので、あえて詞は続編ものにできたということもありますね。まあ、続編と言っても内容は全く別で、ハイブリッドガールという言葉繋がりですが。学校帰りが一緒の片思い少女が実は人造人間だったということではありませんので(笑)。
―― 確かに、これまでのStar☆Tにはない、とてもハードな曲ですよね。
菊池:今までは松中やsamanoさんの曲をアレンジする形で参加しておりましたが、今回は最初から最後まで自分で曲を作ってみました。往年のアイドルの曲をモチーフに、出来るだけシンプルに、しかしアレンジは激しいロックっぽくなど自由にやってみました。大まかな作曲はおよそ一晩でざっくりとしましたが、一番の見所はエレキギター。松中のアルバムにも参加してくれた木曽義明君にお願いしたところ、快く引き受けてくれたので、ほぼそれに甘える感じで作製しました。メロウで泣き叫ぶようなギターで世界観をより引き立たせてくれています。美憂さんが歌っているソロパートでは、オーダー無しにもかかわらず想定外の素敵なフレーズを弾いてくれたので、アレンジを変更し、より切ない演出をしてみました。ボーカルについても、チームヴィーナスは歌に個性のあるメンバーが多いので、力強く歌い上げるパート、切なく語るようなパートなど自由に編成できたと思います。
今のところ露出の機会は少ないと思われますので、CDでじっくり聴いていただきたいと思います。
―― 続いては3曲目の「SAYONARA」について。再び作詞作曲の和香さんの登場です。「SAYONARA」の制作経緯をお伺いします。
和香:リード曲「モノクロームデイズ」は、清水Pのオーダーがすごく細かくあったので、とっても大変でした(笑)。その反動でか、もう1曲のほうは思い切り自由に、自分の好きなことをさせて貰えました。私は歌謡曲と70〜80年代の音楽が好きなので、SAYONARAのメロディはいかにも分かりやすく古くさい、覚えやすい、プラス持ち前の喪失感を大放出、そんな感じになりました。
清水:ミニー・リパートンの「Lovin' You」感が半端ないですよね、もう和香正木コンビの「Lovin' You」好きが溢れ出ちゃってる。
和香:「さよなら」をタイトルにした名曲や、さよならというフレーズの入った名曲は世の中にたくさんありますが、そのさよなら業界に入る曲を自分が作るならどんな風になるだろう?なんて考えで作り始めました。イントロは、5thシングルに入っている私達の前作「恋のよ〜いStar☆T」の続編のイメージでつけてもらえました。歌詞は、あの曲の主人公 「恋スタ子ちゃん」のその後の結末を描いております。
清水:そうだったんですか、この曲も続編なんですね。
和香:そしてそして曲中に「白い花」が登場しますがこれは私たちがやってますギターボーカルユニット「木蓮堂」のハクモクレンの事です。私は本当は歌うたいなんですが、Star☆TのCDにボーカルやコーラスで参加したことはなく、残念ながら自分のCDが流通したことはありません。彼女たちの歳の頃、全国に流通するCDに自分の声が入ることがどんなに羨ましかったか〜(涙)。なので歌詞の中にちょい役で登場させてしまって、彼女達にずっと歌い続けて貰いたいなという勝手な思いです。
―― ボーカルは木戸怜緒奈さんと牧野凪紗さんのツインボーカルですね。
和香:「モノクロームデイズ」の歌オーディションをする中で2人を選びました。なぁちゃんの切なく流れるような歌い方も好きですし、れおなちゃんの感情溢れる歌い方も好きです。れおなちゃんは彼が浮気しようものなら二度と許してくれそうもない潔さ(笑)。
最後の台詞は、当初は1人ずつ録ってみて、いい方を使うよって言ってたんですが…結局2人とも採用に。みなさんならどちらの台詞を採用しますか?(笑)。
―― それでは、ヴィーナス盤最後に収録の「おいでん2015」について。菊地さんに再びご登場願います。
菊池:よろしくお願いします。
―― この曲は、他の曲とは違う経緯があるんですよね。
清水:はい、昨年(2014年)の春に豊田市からの依頼で「とよたまちなかおいでんミュージカル」という短編映画を豊田星プロで作りました。本職は映像製作なので。豊田の中心市街地のPR映像です。で、その楽曲を松中さんと菊池さんコンビに依頼しまして、映画の主演が元Star☆Tの片岡萌で、歌も彼女に歌ってもらいました。その曲が、とってもよくて、映画用にはまち側の1コーラス分しかなかったんですが、それじゃあもったいないな、どうしてもフルサイズにしたいな、と思って今回ここに収録しました。
菊池:映画用の時は、映画と同時製作しなくてはいけないこともあり、時間的な制約があって、アレンジがシンプルになりすぎたなという反省もあったので、今回は豪華にしてみたいと思っていました。思い切ってテクノアレンジにするか、とか悪知恵が働いたりしていましたが(笑)、ちょうど松中もCDアルバムの作成中で、前作「ハイブリッドガール」のカップリング曲「明日晴れる」で素敵なアコギでバッキングやソロパートを入れてくれた、金藤大昴君がレコーディングの際にお願いしたところ、快くこの曲に爽やかなバッキングギターを入れてくれました。ちなみに彼はフィンガーピッキングの達人であり、Finger Picking Day 2013にて西日本予選会最優秀賞、全国大会最優秀賞、楽曲賞、また2014年は世界大会でも2位を取るなど20代前半ながらものすごい経歴を持つギタリストであります。現在はアコーディオンとのデュオ「プチポワール」として精力的に活動されています。そのギターのお陰もあり、十分豪華なアレンジも出来、また清水Pも相変わらずパパッと歌詞を作られてきたので、この曲が一番早く形になりました。
清水:ちょうど豊田市は周辺町村との合併から10周年で、いなかとまちの融合をうたってますので、2番のいなか側を足しました。これもある意味“続編”ですね、地元映画の主題歌からブラッシュアップしてフルサイズ曲に、片岡萌から現メンバーにという2つの意味で。 「豊田よいとこ音頭」に続くご当地ソングになってくれるとうれしいですね。この曲は、新☆豊田市誕生10周年記念プロジェクト連携事業にも認定されました。
菊池:爽やかに存分に豊田の魅力を押し出している曲なので、豊田のことをあまり知らない方でも、是非とも愛聴していただきたい曲です。
―― 菊池さんは、ミックス、マスタリングもご自分でやられるそうですね。
菊池:はい、Star☆Tの楽曲では、僕がアレンジに関わっている曲に関してはミックス、マスタリングもほぼ自分で行っております。そのため他の曲と若干雰囲気が違ったりもしますが、最後まで自分の思った通りに編集が出来るというメリットがあります。今回関わらせていただいた曲「ハイブリッドガールU」「おいでん2015」「いちばん優しいひと」は前作までと違い、サビもメインボーカル+コーラスという形でミックスしました。サビも誰が歌っているかが良く分かると思います。特に深いこだわりは無いですが(笑)、それぞれ録音したボーカルの一番の良い所を採用できると思い、そういう方式にしてみました。「おいでん2015」のボーカルは、橋本杏奈さん、森本凪彩さん、橋本佳那さん、和久田朱里さん、千賀璃奈さんの5人で歌ってます。
清水:ここまでがヴィーナス盤です。ヴィーナス盤は収録時間も他の2枚と比べて長くて、大作感のある曲が多いですね。リード曲から壮大な「ハイブリッドガールU」、バラードの「SAYONARA」、ポップでかつご当地ソングの「おいでん2015」と、王道のヴィーナスらしい、これまでのStar☆Tのシングル構成感のある盤だと思います。この4曲だけでも十分勝負できるというか。私の曲が入ってないんで、ふざけた感がないというか(笑)。
―― ありがとうございました。それでは、シリウス盤、オリオン盤は次回に。