※楽曲制作者のプロフィールはこちら → http://blog.star2t.com/article/456400380.html
― まずは、トータルプロデュ―サ―の清水さんより本作の制作経緯をお聞きします。
清水:Star☆Tは5枚目シングル「ハイブリッドガール」以降大体1年に1枚のCDを発表してきました。毎年年度初頭に1年の計画とか目標を立てるんです。でも、2016年度は、多数のメンバーの退団もあったりして、計画が立てられない状況でした。計画どころかStar☆T自体存続できるかどうかという状況で。
しかし“アイドル王道”というコンセプトを掲げて、1曲ずつ新曲を作っていって、青SHUN学園のSHUNさんにも曲を作っていただいて、7枚目のシングル「コングラチュレーション〜希望の鐘の音〜」を出すことができました。「コングラチュレーション〜希望の鐘の音〜」は色んな意味でStar☆Tの中では特別な1枚になりました。
そんな中で2017年度の初頭には、アルバム制作の計画を立てることができました。「コングラチュレーション〜希望の鐘の音〜」収録曲は“アイドル王道”として楽曲の評価もみなさんにいただけたと思いますし、真正面から楽曲やパフォーマンスで勝負するという意味での“王道”もさらに進めよう、次はアルバムだと、自然となりました。
それともう1つアルバムを発想した理由がありまして、Star☆Tはデビューの時から、楽曲制作も豊田の人材、豊田に関わりがある人材に依頼してきました。ここまで基本的には3〜4組で作ってきたんですが、5年活動する中で地元のミュージシャンや音楽制作者と多く知り合いまして、みなさんから「曲作りますよ」と言っていただいたりして、それならアルバムにしないと曲が収まらないなと。
地元のアーティストさんと知り合う中で、1つはこのアルバム制作に繋がり、もう1つは毎月2回豊田市駅前でStar☆TだけでやっていたミニライブをToyota Citizen Music Park〜豊田市民音楽広場〜にグレードアップして(2017年5月〜)ゲスト出演してもらうことに繋がってます。豊田という地方都市でのミュージックシーンというものを作っていきたいと思ってます、アイドルというジャンルにこだわらずに。
― なるほど、ということは“王道”と“オール豊田”というのは最初から決まっていたわけですね。
清水:そうですね。1stフルアルバムと言ってますが、実は6thシングル「モノクロームデイズ」は3タイプでカップリング曲違いで全部で10曲作ってますし、「restart」もミニアルバムとして7曲収録しましたので、曲数が多いことの不安はありませんでした。提供依頼するみなさんに実力があることはわかってましたし。
それで、まあ、年代が出ちゃうんですが、私は“アルバム至上主義”というか“アルバム作ってなんぼ”ってところで音楽聴いて育ってきましたので、やっぱりただ十数曲を集めただけのアルバムにはしたくないな、と。
さらに、Star☆Tはステージや他でも“物語”“ストーリー”を伝えていきたいってのもあって、映画やったり、5周年公演で芝居をやったりしてきたという流れもあったので、ここは“コンセプトアルバム”、アルバム全体でストーリーになっているアルバムにしようと。
― ここで、“アイドル王道”“オール豊田”“コンセプトアルバム”というのが揃ったわけですね。
清水:はい、この3つのコンセプトを最初に決めて、そこから進んでいった感じですね。
― それでは、具体的な制作の経緯をお聞かせください。
清水:時系列でいうと、まず2017年の夏に新曲をステージにおろしたいというのがあって、これまでにも楽曲提供いただいている菊池卓也さんと深井勇次さんに6月の時点で制作依頼をして、私も1曲作って、菊池さん松中さんコンビの「Only Shining Star」と清水の「夏をあげる」を7月に、深井さんの「2021」を10月に先行でステージにおろしました。
本格的にアルバム制作が動き出したのは9月で、まずは、10組の豊田のアーティストさんを集めて交流会(という名の飲み会)をしまして、正式に楽曲提供をお願いしました。ストーリー作りの依頼も豊田で活躍する劇作家のどうまえなおこさんに依頼したところで、まだストーリーはできてなかったので、楽曲制作のみなさんには、とりあえず“アイドル王道”の曲を作ってください、テーマはありません、ジャンルも問いません、歌詞も後でいいです、まずはライブばえする曲をお願いしますと、かなり無茶ブリをしまして(笑)。
― 短編小説の収録はどのような経緯で。
清水:コンセプトアルバムとしてアルバム全体で1つのストーリーを作ると言いつつ、各曲はアルバムのストーリーを離れても成立するようにしたいとも思ってまして、わかりやすくするために、短編小説をCDのブックレットに収録するというのもごく初期の段階で決めてました。最初からどうまえさんに頼むつもりで、どうまえさんなら、いい物語を書いてくれるだろうという見込みもありましたし。
どうまえさんとの打ち合わせでは、テーマはやっぱり“アイドル”になるなぁって話はしまして、でも内容はお任せしますって感じで。それで、どうまえさんから2つのストーリー案がきまして、その1つが人魚姫のモチーフで、いいじゃないですか、それでいきましょう、と。
― 楽曲とストーリーが同時進行で作られていったんですね。
清水:曲の方は、9月から1ヵ月を目処に曲のみのデモをみなさんに作っていただいて、10月にはストーリーの第1稿がどうまえさんから届いたので、ストーリーに合うように曲を並べてみて、各曲の詞のテーマや設定を決めまして、そこから今度は作詞の依頼をするという流れでした。作曲の方で詞もやりたいと言っていただいた方には作詞もそのまま依頼して、それ以外の曲は別の人に作詞を依頼して。ただ作詞もかなりざっぱな依頼で(笑)、例えば「純粋LOVE!」だと「アイドルファンの心意気的な、愛する人を陰で支える悲哀的な」とか、「アイ♡ワナ」だと「アイドルになりたい!アイドルって?的なアイドルの目線で」とか、それくらいのほわっとした依頼でした。今思うとほぼ丸投げですね、申し訳ないくらい(汗)。
ただ、ストーリーに寄せ過ぎて解釈の幅が狭くなるものなぁと思ってましたし、あまりこちらから設定や内容を指定しすぎると、バリエーションが貧しくなるというか、せっかく10組以上の制作者が関わってるんだから、ポリフォニックな、多層的なものにしたいな、できるだけ自由に作ってもらいたいなと思ってのことです。いろんなタイプの曲がある方が飽きないし、私はそういうアルバムの方が好きですしね。
― ここでほぼ楽曲も出そろって、ストーリーも見えてきたと。
清水:まだ何曲かできてない曲もありましたが、そうですね、11月頃には大分見えてきて、手ごたえも感じてました。実は全然曲がストーリーどおりに並ばなかったらどうしようとか、使えない曲があったらどうしようとか心配もあったんですが、それは杞憂でした。ボツにした曲もないですし、例えば曲タイトルもみなさんから上がってきたままですしね。構成や歌詞の細かな直しを依頼したり、逆に曲のデモをどうまえさんにフィードバックしてストーリーに組み込んでもらったりという作業をしつつ、12月のボーカルレコーディングに向けて完成させていきました。
12月に5日間かけてボーカルレコーディングをしました。曲ごとのボーカルの割り振りは、全体の流れや歌の実力をみつつ私がやりました。楽曲制作のみなさんにはレコーディングにも立ち会ってもらって、年末に終わって、それからミックス作業、年明けすぐにプレス入稿でしたので、楽曲提供のみなさん、ミックスの深井さんには、最後は年末年始返上で仕上げてもらった感じです。大変助かりました。
小説も第4稿まで書き直しをしてもらって、最後はちょっと字数がブックレットに収まらないってなってちょっと削ってもらったりして、こちらも年末ギリギリで完成しました。
― それでは、楽曲提供のみなさんにも入ってもらって、各曲についてお話を伺っていきます。まずは、1曲目「Introduction」について。
清水:実は、9月の楽曲依頼の時に木蓮堂さんにだけは「バラードを」とお願いしてまして、さらに曲を並べて作詞をお願いする段階で、バラード曲をアルバムの柱にしたい、タイトルも「メロウ」でお願いしたい、と。そのバラード曲のモチーフをちりばめて、コンセプトアルバム感を出したいというのは、曲順を並べるくらいで決めたと思います。朗読を入れるってのはどうまえさんの提案ですね、こういう感じどうですかって参考の曲を聞かせてくれたりして。
それで、木蓮堂さんから「メロウ」のデモがきて、印象的なイントロのフレーズを作ってくれていて、それを使って「Introduction」と「Instrumental」を作りました。で、小説の冒頭の部分に全体のテーマが出そろってるなと思って、ここを朗読にしようと。
今回アルバムで曲数が多いので、各曲でボーカルを割り振ってて、全メンバーが参加している曲はこれと最後の「2021」だけなんですよね。大体1センテンスずつ交代して朗読してますので、あまり差がなくスムーズに流れるように、感情を込めずに割とフラットに朗読してもらいました。棒読みにならないギリギリのところくらいで。
聴いてる人にも、ここで、グッとストーリーに入ってもらいたいなぁと思ってます。
― 続いて、2曲目の「恋するマーメイド」について。まずは作曲・編曲の藤村のりおさんに伺います。藤村さんはStar☆Tへの楽曲提供は初めてですね?
藤村:はい、もともとStar☆Tさんの楽曲には「気まぐれストーリー」「15センチ」でギター演奏で参加させていただいておりました。今回のメロウ制作の話を聞き、ぜひ楽曲から作りたいと思いコンペに参加させて頂きました。
まさか、採用していただけるとは思っていなかったので、Star☆Tさんに自分の作った曲を使っていただき、とても嬉しく思っています。
― 藤村さんはレコーディングエンジニアの深井さんとお知り合いで。
藤村:はい、深井氏とは10年以上仕事をさせていただいてます。残念ながら、ボーカルレコーディングは、スケジュールの都合上参加できなかったのですが、深井氏のことを信頼してますので、ディレクションはプロデューサーの清水さんと深井氏にお願いしました。次回また機会がありましたら、ボーカルレコーディングもぜひ参加したいと思っております。
― 「恋するマーメイド」を作る上でこだわった点は?
藤村:制作打ち合わせの時に、王道のアイドルソングというお話だったので、キャッチーなメロディ、耳に残るメロディを意識して作りました。Aメロは可愛らしさを出したかったので、音符を減らしています。一度聞いただけで、覚えやすい、口ずさんでしまう、そんな曲になっていたら嬉しいです。
まだ色々な感じの楽曲に挑戦したいので、また機会があればぜひ、参加させてください。バラードとかも得意です(笑)。
― ありがとうございます。続いて「恋するマーメイド」作詞のどうまえなおこさんです。
どうまえ:メロウの小説を書かせていただいたこともあり、アルバム1曲目の歌曲を作詞させていただきました。物語の始まりなので、まだ恋を知らないメロウが恋や愛を夢みるイメージで詞を作りました。曲のイメージから王道アイドルでいこうと思い、80年代90年代のアイドル曲を意識して作詞しました。
清水:藤村さんからのデモを聞いた時に「これぞアイドル王道だ!」ってなりましたね。現在のアイドル曲らしさはもちろん歌謡曲らしいキャッチ―さもあって。この曲をアルバムのオープニング、実質的な1曲目にするとすぐ決めまして、それなら歌詞も王道アイドル詞をストーリーを書いてくれているどうまえさんにお願いしようと。どうまえさんには1曲くらい作詞もしてもらいたいと思ってましたので。
この曲もアルバム発売前にステージで先行披露しました。いわばアルバムからのシングルカット曲という感じですね。
― 続いて、3曲目「愛を目指せ」について。作曲・編曲の西岡隼哉さんです。
西岡:最初イメージはアイドルで考えたのですが、メロウというコンセプトと素晴らしいストーリー読んで映像が浮かびました。その情景を思いながら他の素晴らしい作家さんとできるだけかぶらないよう独特なジャンルで制作を進めました。クラシック風POPといいますか、EDMといいますか、映画音楽風なジャンルで作り込んで行きましたね。
あらかじめキーを聞いていなくて、歌入れの時は歌えるか心配でした(笑)。
― こだわったところ、アピールポイントは?
西岡:一般にいうアイドル曲っぽくないような曲に仕上げたかったので、仕上がりを聞いた時は結構満足しました。情景の浮かぶような楽曲をぜひ楽しんでください。Star☆Tの活動をクリエイティブな部分でお手伝いできたことに大変感謝しています。
― 続いて「愛を目指せ」作詞の石黒さんから。
石黒:最初に西岡さんのデモを聴いた時、パワフルなというかとても前向きな楽曲だという印象を受けました。ライブだったら拳振り上げ盛り上がるのではと。そこで、主人公目線で、愛のため困難にも立ち向かう姿を詩にしたのですが、清水さんからは別の目線で、もっと哲学的なと言うか、荘厳な感じで、と言われまして…思い切って古い言い回しにしてみました。
ただ、目線は、聴く人によってどちらとも捉えられるようにしたつもりです。また、最初のパワフルなというイメージは壊したくなく、英語の歌詞の部分はほぼそのまま残した感じです。今回はあくまでストーリーに沿った歌詞だと思ったので、そこも意識したつもりです。愛を探す困難な旅に、敢えて旅立つ決意みたいなものが伝わっていればいいなと思います。
清水:西岡さんがクラシックを勉強されてきた方だとは聞いてまして、牧野凪紗のソロのプロジェクトもやっていただいたりしてて、バラードの作曲は知ってたんですが、今回激しめの曲ということでどんな感じでくるのかなと楽しみにしてたんです。で、デモを聴いたら「こう来るか!」と。これまでのStar☆Tにはない感じの曲をいただきました。
それで作詞は誰にお願いしようかとなりまして、詞もアイドル曲っぽくない方がいいなと。石黒さんとはもう知り合って10年くらい経ちますが、最近<TAG>というプロジェクトを一緒にしたり、1年前の5周年公演では芝居の演出をしていただいたりして、作詞も1曲お願いしたいなと。確かに最初いただいた歌詞は直しをお願いしまして、演劇界の石黒ファンには怒られそうですが、、、(汗)。でも、多分西岡さんが歌メロと想定してなかったところまで詞がついてたり、譜割りも独特な感じで攻めてましたね、若いです、石黒さん(笑)。私と同い年ですが。
ここでは、メロウが魔女と話すところ、愛についての話を聞く場面を想定しています。
(その2に続く)
「メロウ」楽曲解説その1(全体〜3「愛を目指せ」)
「メロウ」楽曲解説その2(4「純粋LOVE!」〜6「Only Shining Star」)
「メロウ」楽曲解説その3(7「アイ♡ワナ」〜12「夏をあげる」)
「メロウ」楽曲解説その4(13「ファンタジーメモリーズ」〜14「2021」)
